さわらないで









最近、キラの様子がおかしい。

コックピット篭城事件からこっちは、比較的友好的になったと思っていた。

だが、ここ2,3日明らかにキラの俺に対する態度が変だ。

顔を見れば逃げる始末なので、原因を問うこともできない。

そもそも、思い当たる節がないのだ。



「どーしたもんかね。」

「フラガ大尉。どうかしましたか?」



腑に落ちないキラの態度に、一人ごちていると、マードック軍曹がやってきた。



「いや、キラがさぁ・・・」

「また何か嫌われるようなことしたんでしょ?」

「失礼な、俺を何だと思ってるわけ?」

「だってフラガ大尉ですもんねぇ。セクハラでもしたんじゃないですか?」

「ここ最近は過激なスキンシップとってないんだけどなぁ・・・」



肩を抱いたりだとか、頭をなでたりだとか、よくスキンシップをとる。

が、格段それを嫌がっている風でもなかったように思う。

何故なのか、皆目見当がつかない。



「他の坊主や嬢ちゃんたちにでも聞いてみたらどうです?」

「そーだなぁ、そうするか。悪かったな、仕事の邪魔して。」

「いいえ。フラガ大尉といると話のネタに困らなくていいですよ。」



軍曹と別れ、キラの友達の姿を探す。

彼らなら何か本人から聞いているかもしれない。









「ちょっといいか?」

「フラガ大尉。どうしたんですか?」

「いやなぁ、ちょっと君たちに聞きたいことがあるんだけどさ。」



確か、サイにミリアリアにトールだったっけ?

偶然通路で3人に出会った。

3人は、突然声をかけられて驚いた様子だった。



「・・・・キラのことですか?」

「さすが女の子は察しがいいなぁ、お嬢ちゃん。何か聞いてないか?」

「俺は何も。」

「俺も。ここ最近大尉に対する態度が変だとは思ってたけど。」



サイとトールは何も聞いていないらしい。

最近の若い子は友達同士でこういう話はしないのだろうか。

それともキラが特別なのかもしれない。

あまり他人にプライベートなことを話すタイプではなさそうだ。



「お嬢ちゃんは?原因がさっぱりわからないから、困ってるんだ。」

「キラから直接聞いたわけじゃないですけど、思い当たることがないわけじゃないです。」



彼女は普段からキラのことを親身に考えている風である。

しっかりしてるし、将来いい女になりそうだ、などと関係ないことに思考をめぐらせてしまう。」



「で、思い当たる節って?」

「ただ・・・私が言っちゃうとルール違反だと思うから。キラから直接聞いてください。」

「は?言えないようなことなわけ?」

「っていうか、間違ってたらキラに悪いし・・・それに、もし合ってるとしたら絶対私からは言えません。」

「そうか、それは残念だな。悪かったな、時間とらせて。」

「いえ、こちらこそお力になれなくてごめんなさい。」

「気にしなくてもいいさ。後で本人に聞いてみるよ。」



結局何の収穫も得られず、ボーっとうろついていた。

特にすることもなかったので、展望デッキで一服していた。

タバコをふかせていると、タイミングよくキラが現れたのだ。



「フラガ大尉・・ッ・・・」



俺の姿を見つけると、踵を返して元来た方向へ帰ろうとする。

追いかけて、腕を掴んだ。



「やっ・・・・さわらないでッ」

「坊主、逃げるな。なぁ、俺何か気に障ることした?」



バツが悪そうに俯いたまま、首を横に振る。



「じゃぁ、なんで俺を避けてたわけ?」

「・・・・僕、変なんです、最近。」



キラは意を決したようで、ポツポツと話し始めた。



「フラガ大尉を見ると恥ずかしくなって、顔合わせられなくて・・・それでミリィに相談したら・・・・・」

「相談したら?」



大体の筋は掴めたと思う。

お嬢ちゃんの言っていたことこと辻褄も合う。

だけど、その言葉をキラの言葉で直接聞いてみたいと思った。



「その・・・・恋、してるんじゃないかって言われて、それで・・・あの・・・・」

「坊主が俺に恋してるって言ったのか、お嬢ちゃんが。」

「それで、いろいろ考えてるとやっぱりそうなのかな、って思って・・・」



顔を真っ赤にして、自分への告白をする少年を愛しく思った。

元々嫌いではないし、外見だけいうなら完璧にタイプである。

彼の告白を素直に嬉しいと思っている自分に、正直驚いた。

もしかしたら、自分も知らず知らずのうちにキラに惹かれていたのかもしれない。



「あの、僕・・・フラガ大尉のことが好きです。あ、でも・・その、伝えたかっただけで・・・・」

「サンキュ。」

「え、あ・・・・フラガ大尉!!?」



なんともいじらしい告白で、自分の想いに気づかされた。

抱きしめると、困ったような顔でこちらを見上げてくる。



「キラ、俺もキラのことが好きだよ。」

「大尉・・・」



耳元で、そっとそう囁いてやる。

キラの細い腰は想像以上に抱き心地がいい。

これは、ひょっとしたら癖になりそうだ。



「なぁ、キラ。大尉っていうの止めないか?」

「でも・・・・」

「2人でいるときだけでもいいからさ、名前で呼んでよ。」

「・・・ムウさん」

「よくできました。」



つい軽く唇にキスを仕掛けてしまった。

キラは顔を真っ赤に染めて、状況についてこれてないようすだ。

金魚のように、口をパクパクさせている。



「フ、フラガ大尉!!?」

「キラにはまだ早かったか?これからちょっとずつ慣れていこうな。」

「え、えぇ!!?」

「それと、ムウさん、だろ?」



何故か、久しぶりに本気の恋愛ができそうだと、ふと思った。

それにしても、相手がお子様で、しかも男ときた。

これは長期戦になりそうだな。