「秋也っ!!秋也?生きてるか?」

「たく・・・ま?」



海へ飛び込んだ俺達は、運良く島のようなところに流れ着いた。









於母影









「これからどうするんだ?」

「そうだなぁ・・・どうしようか?」



本当は余裕などなかったが、軽く微笑む。

拓馬を不安にさせてはならない。



「とりあえずどこかに隠れよっか?」

「そーだな。」



適当なところに身を潜め、ひと息ついた。

ここ数日、生きた心地がしなかったからこの平穏が嬉しい。



「拓馬・・・お前のこと教えてよ。話したくないことはいいけど。」

「なんで?俺のこと知りたい?」

「・・・・・・暇だしな。」

「ひでー。じゃぁ、俺が話したら次は秋也が話せよ?」

「いいよ。」



拓馬がぽつりぽつりと自分の過去を語る。


親に捨てられるかのように今の学校へ入れられたこと。

アメフトでエースだったこと。

けっこうもててたこと。



「・・・・・拓馬・・」

「わりー、なんか湿っぽくなっちまったな。次秋也な?」



昔を思い出しながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


母親が出て行って、父親は自殺して、孤児院に入ったこと。

小学生の頃はリトルリーグの名ショートだったこと。

中学生の頃はロックに夢中になって、ギターをかき鳴らしてたこと。

そして修学旅行でプログラムにあったこと。

そのあと、テロリストとして活動してきたこと。



「秋也も大概数奇な人生おくってるよな。」

「お前もな。」

「でもさぁ、秋也ってテロリストのリーダーって感じないくらい純粋だよな。」



拓馬は全体的な雰囲気がどことなく三村に似ている。

その声に耳を傾けていると、三村がそこにいるかのような錯覚を覚える。

知らず知らず、その声に、空気に、聞き入ってしまった。



「秋也?」



拓馬の声に、思わず我に返った。

”秋也”という呼び方に、目の前にいるのは三村ではないと知らされる。

もう少しで完全に重なるのに、重なってはくれない2つ。

そばにいるのは三村ではないのだと思い知らされる。

三村がもういないのだと強調する。



「秋也!!?」



暖かいものが流れた。

知らず知らずのうちに。

拓馬が何か行っている、がそんなものは耳に入らなかった。


ただ、その雰囲気に酔っていた。

三村に似た彼の纏う空気に。



「・・・・・・・三村」



思わずその名を口にしていた。

他にこの気持ちを抑える術を思いつかなかった。

涙と共に、彼の記憶全てを流してしまいたかった。



あまりにも愛しい思い出を捨て去りたかった。

全てを忘れてしまいたかった。



でも、忘れたくはなかった。



「秋也?」



心配そうな拓馬に縋り付く。

そして泣いた。

涙が涸れ果てるまで泣いた。


拓馬は何も聞かなかった。

ただ、力強く抱きしめてくれた。



「拓馬」

「ん?」

「ありがとう。」



久しぶりに、他人を愛しく思った。

もしかしたら、三村を忘れることが出来るかもしれない。










新しい、愛しい想いが胸に1つ―――









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