いつもは慈恵館で過ごすクリスマス。

だけど今年はノブにまんまと嵌められて、三村と一緒に過ごすことになった。


そんな、三村と恋人になって初めてのクリスマス。









欠けた左手









何度も来た事があるのに、今日は玄関のチャイムを押すのに少し緊張した。

ほんの少し、期待が胸をよぎる。

そんな風にしていると、家の中からバタバタと足音が聞こえ、ドアが開く。



「メリークリスマス、七原。」

「メリークリスマス。これ、先生が持って行けって。」



先生から渡された食材を三村に手渡す。



「サンキュ。とりあえず、あがって。」

「お邪魔します。」











部屋に通されたものの、なんとなくそわそわして落ち着かない。



「そんなに緊張しなくても、襲ったりしないって。」



飲み物を持ってきた三村が、クスクスと笑う。



「あ、それとも・・・・」



期待してる?と、耳元で囁く。

わかっててやってるから、ムカつく。



「そんなわけないだろ、馬鹿。」

「あら、残念。」

「なー、三村。今日、郁美ちゃんとかは?」

「あー・・・今日うち誰もいないんだ。母さんは近所のおばさん連中と旅行で、郁美は友達ん家に泊まり。」



途端に、妙に意識してしまい顔が火照る。

そんな俺の様子を見て、三村はまた笑った。



「今日は1日暇なんだし、まったりしよーぜ?」









雑誌見たり、三村にサイトを見せてもらったり、いろいろしていると、あっという間に夜になった。

安野先生にもたされたものと、三村が用意していたピザやアルコールで随分と豪勢な食卓になった。



「はー、満腹。美味しかった。」

「ご馳走様でした。先生にお礼言っといてよ、美味かったって。」

「了解。こちらこそご馳走様でした。」

「あ、そうだ。ケーキ、どうする?もう食べる?」

「んー、もうちょっとしてからにしない?今、お腹苦しいかも・・・・」



ふいに、三村の顔が真剣なものに変わる。



「七原、コレやる。」

「・・・何?」



渡されたのは、飾り気のない、白い小さな箱。

そっと開けると、シルバーのリングが入っていた。

目線を上げると、優しげな三村の顔。



「三村、これ・・・・」

「男同士だし、いろいろ不安にもさせてると思うから、さ・・・せめて形だけでも。」



三村は箱の中からリングを取り出し、そっと右手の薬指にはめた。



「左手は、大人になるまで待ってな。」

「三村・・・」



よく見ると、三村の指にも同じ物がはまっていた。

嬉しくて、何故か涙が溢れてしまう。



「ありがと・・嬉しい・・・」

「泣くなよ。俺、七原の泣き顔に弱いんだから・・・」



抱き寄せられた胸元に、顔を寄せる。

あやすように髪を撫でる手が心地よかった。



「あの・・・・三村。」

「何?」

「実は、プレゼント用意出来なかったんだ。・・・思いつかなくて。」



三村に喜んで欲しくて色々考えたが、結局何も思い浮かばなかった。

何か思いついていたとしても、三村には叶わなかっただろうけど。



「だから、何でも欲しいもの言って?」

「じゃぁさ・・・約束、頂戴。」

「約束?」

「そう。左手の薬指は、絶対俺以外に渡さないっていう約束。」



左手をとって、薬指の付け根に唇が落ちる。



「そんなの・・・簡単すぎるよ。三村以外にあげたりするわけないじゃん。」



そして、どちらからともなくキスをした。

結婚式での誓いのキスのような、神聖なキス。





そんな1年前のクリスマス。



















「やっと・・・見つけた・・・」



ずっとずっと探してた。

委員長から聞いて、三村の死は知っていた。


今、やっとそれが頭に記憶されたような気がする。


どろどろで、血まみれだけど、綺麗に笑っている三村。



「・・・・笑ってる。」



すっかり血の気を失った唇に、キスを1つ。

殊更に優しく触れた先は、氷のように冷たい。

三村がもうこの世の人ではないのだと、痛感させられる。



「やっと会えたね、三村。」



左手にはめられた指輪を抜き取る。

首からかけているものと全く同じそれには、下手くそな文字が彫ってあった。



"I love you forever, shuya. xxx"



堰を切ったように、ふいに涙が溢れる。

瞬間、膨大な量の情報が頭を廻る。



初めて会った噂のサードマン。

馬鹿みたいにはしゃいだクラスマッチ。

少し照れたような顔で告白された、屋上の景色。

初めてキスをした日。

初めて体を重ねた日。

将来を誓い合った、あのクリスマス。



涙が止まらなかった。

自分にとって三村がどれほど大切な存在だったかを、痛いほどに思い知らされる。


冷たい体を強く抱いて、ただただ、静かに涙を落とした。



















それから、何年も経ったクリスマス。

左手の薬指には、あの指輪。