「七原。」

「・・・・何?」

「俺、七原のこと好きなんだけど。」









バレンタイン









2月13日、たまたま部活のない放課後、三村と喋っていたら、突然告白された。



「お、俺・・・・」

「返事は明日な。」



なんと三村は、返事も聞かず帰ってしまった。

教室に1人残された俺にどうしろというのだろうか。

あまりに異様な展開に、頭が付いていかない。

明日はバレンタインデー。

チョコを持って告白に来い、とでも言うのだろうか?


うじうじ悩むのも性に合わないような気がして、明日勝負をかけることにした。

俺だって三村のこと好きだし、願ってもないチャンスだ。

っていうか、両想いじゃん!!!


今さらながら、三村の言葉に赤面してしまう。

帰ったら女の子達がチョコを作ってるだろうから、俺も混ぜてもらおう。



















慈恵館の女の子達に道具を貸してもらって、綺麗にラッピングされたチョコレート。

いくら相手の気持ちが分かっているとは言え、やはり告白するのは緊張するものである。



「秋也、おはよー。」

「おはよ、豊。・・・三村は?」



通学路で豊に出会った。

幼馴染の2人は毎日一緒に登校してるのに、今日は豊1人だった。



「んー、なんか今日休みらしいよ?信史に用事でもあった?」

「何でもないんだ。ただ珍しいな、と思って。」



何でもなくなんてない。

「返事は明日な。」って言ったの自分じゃん!!!

学校来いよ、バカ三村。



「それより秋也、今日大変だね。」

「・・・・?」

「だってバレンタインでしょ?チョコ一杯じゃん。」



そうでした。

本日はSt.バレンタインデー。

恋する乙女の決戦の日。

もしかして、だから三村は休んだんじゃ・・・・・。



「豊。俺、今日学校休む。適当に理由言っといてよ。」

「え、ちょっ。秋也!!」

「じゃ、まかせたから。」



目指すは三村宅。



















「三村ー、いるんだろ?」

「あら、いらっしゃい。七原もサボリか?珍しいな。」

「話したいことがあるんだけど。」

「ふーん。まぁ、上がれよ。」



少し蒸気する顔で三村を見れば、何もかも見透かしたような、そんな笑みを浮かべていた。

ジュースとお菓子のオプション付きで、部屋に通される。



「で、話って?」

「あの、昨日の返事なんだけど・・・」



顔に血が集まって、熱い。

差し出したのは、チョコレート。



「俺も好きだよ、三村のこと。」



ふと見上げた三村の顔も、俺と同じくらい赤かった。

緊張してるの、俺だけじゃないんだ。



「俺も好き。アイシテル、七原。」



抱き締められて、きゅっと目を閉じれば、唇に柔らかい感触。

三村の言葉に、体温に、柔らかな唇の感触に。


何故か泣きたくなった。



「七原?ごめん、嫌だった?」

「え、何で?」

「だって、泣いてるじゃん、お前。」

「嘘。」



知らないうちに涙がつと流れていた。

悲しいわけじゃないのに、何故か止まらなかった。

留まることのないその涙を、三村がぺろりと舐めとった。



「ッ!!?」

「ごめんな、もうしない。」

「嫌、じゃないから。そういうんじゃなくて・・・」



少し寂しそうに笑う三村に、必死でしがみ付く。

宥めるように頭を撫でる仕草が心地いい。



「ごめん、泣いちゃって。」

「いいって、俺七原の泣き顔結構好きだし?」



かぁーっと頬が真っ赤に染まる。

思えば、こいつは女慣れっていうか、恋人扱いに慣れてるんだった。

大丈夫かな、俺。



「それよりさ、チョコ食べない?」

「初めて作ったから、美味しくないかもしれないけど・・・」

「え、何?コレ七原お手製なわけ?うっわ、どーしよ。めちゃくちゃ嬉しいんだけど。」



三村が喜んでくれる。

それだけで、こっちも嬉しくなってくる。

恋スルのってこういう気持ちなのかな。



「なんか食べるのもったいないな。」

「食べずに置いとく方がもったいないから、食べて?」

「じゃぁ、イタダキマス。」

「美味しい?」



三村は黙ったままで、キスをした。

舌を絡めとられ、口の中に広がる、甘いカカオの味。



「どう?」

「美味しい。」



悪戯っ子のように笑う三村に、笑顔で返す。











そんなバレンタインデー