もっと

もっと


もっと早く



アンタに出逢えたらよかったのに









デルタ









秋也には、好きな奴がいる。

しかも相手がこの世にいないから、余計にタチが悪い。

死んだ人間は、キレイな思い出としていつまでも生き続けるんだから。



「拓馬ぁー?こんなとこで何してんの?」



世界から指名手配されているテロリストのリーダーだとは到底思えない間延びた声。



「んー、ちょっと考え事。どうやって秋也を落とそうかと思って?」

「無理だと思うけど。まぁ、頑張れば?」



そう言って笑う顔がとてもキレイだ。

きっと『三村』って奴には、もっとキレイに笑うんだ。

『三村』って奴は、どんな秋也を見たんだろう?



「なー、秋也ァー?」

「何?」

「ちょっと聞いてもいい?」

「何でもどうぞ。答えられる範囲で。」



前からずっと聞いてみたかったんだ。

でも、聞いたら後には引けない気がしてずっと聞けなかった。



「『三村』ってどんな奴?」



驚いたような、悲しんでいるような、そんな複雑な表情。

やっぱり聞くべきじゃなかったのかもしれない。


でも、どうしても気になるんだ。



「ごめん。嫌だったら答えなくてもいいから。」

「違う、びっくりしただけ。・・・・聞きたい?」

「今後の参考に是非。」

「三村信史。通称『ザ・サードマン』。岩城中1のプレイボーイで、バスケ部のポイントガード。」



ほんの少しだけ、楽しそうに秋也が『三村』のことを話す。

時々、昔を思い出してはくすくすと笑う。



「泣かした女の子の数知れず。・・・そういえば、俺と付き合ってる時にも何回か浮気したっけ、アイツ。」

「・・・どこがよかったわけ、そんな奴の。ただのサイテー野郎じゃん、ソイツ。」

「確かにサイテー野郎だったけど、でも、めちゃくちゃかっこよかったんだ。」



心なしか、秋也の顔が少し赤い。



「それは・・・顔が?」

「顔もだけどね。何でも完璧にこなすから、悔しいくらいにかっこよかった。」

「へぇ。」

「よく馬鹿やって、先生に怒られたりしてたなぁ・・・」



キレイなままの姿で、秋也の前から姿を消したアンタが憎いよ、『三村』サン。

卑怯じゃないか、そんなの。

生きてる俺に勝ち目なんてないじゃん、初めから。


こんなの、聞かなきゃよかった。



「拓馬を初めて見た時さ、あの時・・・三村かと思った。」



薄々気付いてた。

時々、秋也が俺を通して、別人を見ていること。



「でも、最近は全然違うって思う。拓馬は拓馬だ。ごめん。」

「・・・・絶対忘れさせて見せるから。覚悟してろよ?」



宣戦布告のついでに、軽く秋也の唇を奪ってやった。

ファーストキスじゃないのが惜しいけど。



「た・・・・・っ拓馬!!!」













見てろよ、『三村信史』

絶対秋也をものにしてみせる。


アンタはそこから見てろよ。



先に死んだこと、後悔させてやるよ。