悪夢のような修学旅行の後
手放せなくなったもの
1つは典子、ノブとの約束を守らなければならない
そしてもう1つは―
トランキライザー
「み、むら・・・・・・」
5年前、この世でたった一人の、本気で愛した彼の死骸を目の当たりにした。
穴だらけの彼の身体をバカみたいに抱いて、泣いた。
綺麗な顔は別人のように白かった。
何よりその白を彩る鮮血は、鮮やかだった。
そんな彼を、彼の形をした入れ物を見てしまった。
それはこの脆い心を壊してしまうのには十分すぎる情景だった。
そして、俺は壊れたのだ。
「秋也、薬貰ってきたよ。」
「ありがと。」
今、俺達は自由の国―アメリカに居る。
5年前、強く望んだこの国にも自由などありはしなかった。
そこにあるのは、人目を忍んでこっそりと暮らす生活だけだった。
一生追われて暮らすのだ。
この事実もまた俺の病んだ心を崩すのには十分で。
また、この脆い心は崩れ落ちた。
一生守り抜くと決めた典子もここにおいて、俺は自由の国を去った。
ただ、トランキライザーだけを持って。
たどり着いた先は、生まれ故郷だった。
狂ってしまった心は彼の存在を求め続けた。
結局、あの忌まわしい修学旅行の舞台となった島に住むことにした。
今度は、トランキライザーさえも捨てて。
薬をきらした心はひどく病んだ。
もう生きる気力すらなかった。
死の恐怖すらなかった。
ただ、ただ只管に、彼に会えることが楽しみだった。
そして俺は人知れず、ひっそりと命を絶った。
彼に会いにいくために
三村信史
彼は俺の人生の全てだった
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