七原と出会ってから暫く吸っていなかった煙草
この間久しぶりに口にした
マルボロ
「信史」
1年のうち何日家にいるかもわからないような父親と久しぶりに顔をあわせた。
自分の家庭よりも他所のオンナを大事に扱う最低な男。
叔父さんを売った張本人。
「お前、最近慈恵館なんかの子とつるんでるそうじゃないか。」
こんな男と血が繋がっているかと思うと、吐き気がする。
七原や、国信が何をしたっていうんだ。
「親のいない子供なんかと付き合うんじゃない。」
「黙れよ、おっさん。」
「親に向かってなんだ、その口の利き方は。」
「俺らより自分のオンナの方が大切なアンタにそんなこと言われる筋合いねーよ。」
「親の言うことは聞きなさい。」
「アイツらの方がアンタより数段マシだと思うぜ?」
「信史!!」
相手にするのもバカらしくなってきて、家を出た。
大人って奴は最低の生き物だ。
特にあのおっさんみたいな狡賢くて、腹黒い奴は。
ああいう輩がいるから、プログラムなんかが何時までたってもなくならないんだ。
嗚呼。
むしゃくしゃする。
特にすることもないから、近くのコンビニへ足を向けた。
そして、懐かしい煙草を手に取った。
俺にとっては精神安定剤のようなものだった。
でも、七原と付き合うようになってからは1度も吸うことはなかった。
懐かしい苦味が咥内を支配する。
「・・・・三村?」
「七原?何してんの、こんなとこで。」
「三村こそ・・・・リストラされたサラリーマンみたいだぞ、それじゃ。」
確かにブランコに座って煙草銜えてたんじゃそう見えるかもしれない。
「なんかあった?」
「なーんにも?」
七原の顔は不審そうに歪む。
「嘘。何かあったんだろ?」
「何にもないって。心配しなくても、ダイジョウブよ?」
「じゃぁ、何で煙草なんか吸ってんの?」
「知らなかった?俺、普通に煙草吸うよ?」
「俺といる間は吸ってなかった。」
七原の目はまっすぐに俺を見つめる。
全てを見透かしてしまいそうな、澄んだガラス球。
「・・・七原には敵わねーよな、ったく。」
「・・で?」
「ちょっとおっさんと喧嘩しただけ。何でもねーよ。」
「俺やノブとは付き合うな、とか言われた?」
全く七原には頭が上がらない。
「俺は、そんなの気にしないから大丈夫なのに。」
「七原がよくても俺が気にするんだよ。」
「だって、それは三村の親父さんが思ってることだろ?俺とは関係ないよ。」
そう言って笑える七原は、強いと思う。
それに比べて、俺は何て脆いんだ。
芯のない心なんてちょっと触れただけでも簡単に崩れてしまう。
「七原ー、暫く慈恵館に泊めてくれよ。」
「親父さんと顔あわせたくない?」
「それもだけど、七原といたいし♪」
「ばーか。」
七原は精神安定剤で
時に中毒になりそうなその味は
まるで煙草のようだ
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